論文紹介、ニュース

2021.06.28

【2】傍腎動脈瘤、胸腹部瘤に対する良好な枝付き・窓付きステントグラフトの中期成績

Midterm outcomes of a prospective, non-randomized study to evaluate endovascular repair of complex aortic aneurysms using fenestrated-branched endografts

Annals of Surgery
DOI: 10.1097/SLA.0000000000004982
Oderich GS et al.

傍腎動脈瘤、胸腹部瘤に対するfenestrated/branchedステントグラフトを用いたEVARの成績について、OderichらによってAnn Surgに報告された。後ろ向き単施設研究で、430名(133傍腎動脈瘤、297胸腹部瘤)の患者が評価された。全例COOK社のデバイスで、custom madeが89%、t-branchが11%に使用された。周術期死亡率は0.9%。周術期合併症は透析導入2%、脊髄虚血2%、脳梗塞2%だった。平均26ヶ月の経過観察でSMAステント閉塞などの瘤関連死亡が3例 (0.7%)に認められた。5年間での全死亡回避、瘤関連死亡回避率、標的分枝血管開存率はそれぞれ57%、98%、94% だった。一例のtype IIIbエンドリークによる瘤破裂が見られたが、血管内治療で対処され、救命された。
以上のように傍腎動脈瘤、胸腹部瘤に対するFB-EVARの良好な中期成績が報告されている。驚くべきは血管内治療の手技時間が153分と非常に早いこと、また造影剤使用量も150ccほどであった。ただ700例以上の経験を有するhigh volume centerでの経験であり、手技が複雑になる程、効率性や治療成績向上の観点から患者集約化の方向に進んでいくことが予想される。長区域のステントグラフト留置では、常に脊髄虚血が問題となりうるが、本研究では、予想通り脊髄虚血に関してはCrawford I-IIIの胸腹部瘤に多かった。予防策としてはstaged-procedure、血圧維持、large sheathをなるべく速やかに抜去する、術中モニタリングをルーティンに行い、症状が出ればspinal drainageを挿入しているようだ。2015年にMayo Clinicを訪問した際に、spinal drainageについて議論があり、日本ではルーティンに入れないと言ったら、絶対にルーティンに入れなきゃダメで、緊急でも終わり次第入れるべきと言っていたが、やはり同手技による合併症を経験され、ルーティンでは挿入しなくなったようだ。

2021.06.08

【1】CUCUMBER研究より

Clinical Impact of Stent Graft Thrombosis in Femoropopliteal Arterial Lesions

Ichihashi S et al. J Am Coll Cardiol Intv 2021;14:1137-47)

大腿膝窩動脈での長区間閉塞病変にはステントグラフトという印象をお持ちかと思います。
実際にRCTや多くの研究で、complexな病変に良好な成績を叩き出しています。
ただ多くの先生が危惧されるのは、ステントグラフトの血栓症です。
CUCUMBER研究はステントグラフト血栓症の予後を評価するために実施された多施設後ろ向き研究です。
1215肢に留置されたステントグラフトのうち、159肢でステントグラフト血栓症が見られました。
そのうち21名(13%)が血栓閉塞した際に急性虚血症状(放置すると下肢切断のリスクがある状態)が見られました。
82%の患者さんに再血行再建が行われましたが、バイパス手術、血栓除去(いわゆるフォガティー)、血栓溶解などのEVTのうち、いずれの治療法を選択しても、再血行再建後の一年開存率は50%程度と、不十分な結果でした。
どういった病変がステントグラフト血栓症再治療後の再々閉塞リスクになるか分析したところ、ステントグラフト初回留置時の重症虚血肢、血栓症発症時の急性虚血症状、小さなステントグラフト径が閉塞予測因子としてあがりました。

ステントグラフトは非常に良いデバイスですが、やはり血栓閉塞時のインパクトは大きいと言わざるを得ません。
大きな血管、健常部へのランディング、十分なrunoff、抗血小板療法など、最適なコンディションで使用したいですね。