研究活動
大腿膝窩動脈病変を有する閉塞性動脈硬化症患者に対する血管内超音波併用下でのステントグラフトを用いた血管内治療の安全性と有効性に関する多施設・前向き研究 (VANQUISH研究)
ViabAhn steNt graft placement for superficial femoral artery disease reQUIring endovaScular tHerapy
-Prospective multicenter registry-
目的と意義
本研究の目的は、大腿膝窩動脈(FPA: femoro-popliteal artery)病変を有する症候性閉塞性動脈硬化症(PAD: peripheral artery disease)患者に対し、血管内超音波(IVUS: intravascular ultrasound)併用下でのカバードステント(Viabahn)を用いた血管内治療(EVT: Endovascular Therapy)の実臨床における12ヶ月の治療成績の実態を明らかにし、その関連因子を探索することである。
本研究を実施することにより、Viabahnを用いた血管内治療成績およびその成績に関連する因子の詳細が明らかとなり、本研究で得られた知見は、今後のPAD診療に大いに役立つものと考える。
背景
現在、FPA病変を有するPADに対する血行再建術としてナイチノールステントを併用したEVTはバルーン単独で行ったものと比較して遠隔期成績が良好であることが報告されている(参考文献:1-6)。しかしながら、慢性期に生じる再狭窄の問題(1年で20-30%前後)は未だ解決されておらず、標的病変に対する再血行再建術が必要となる症例も少なくない(参考文献:1-6)。この再狭窄及び、標的病変再血行再建術(TLR: Target-Lesion Revascularization)を低減することができれば、EVTを受ける症例に対して、大いに恩恵をもたらすことができる。Viabahn末梢血管用治療機器は、EVTで使用可能な末梢血管に対する唯一のカバードステントである。ステント周囲がePTFE(polytetrafluoroethylene)でおおわれているため、新生内膜増殖を抑制することが可能である。海外での多施設単盲検前向き比較試験であるVISTAR trialでは、2年までの成績が報告されており、既存の金属ステントと比較して良好な初期開存率示されている(参考文献:7-8)。しかしながら、これらの成績は、外科的バイパス術と比較した場合未だ満足できる成績ではない。また本カバードステント留置においては、ステントサイズの選択が開存に影響を及ぼすことが報告されているが、既報での使用はすべて血管造影による血管径測定でのステント選択・留置である。血管造影による血管の評価には限界があり、より詳細に血管の大きさ・性状を評価するためのツールとして血管内超音波 (IVUS: intravascular ultrasound)が広く普及しており、実際、わが国では、FPA病変に対するEVTにはほぼルーチンでIVUSが用いられるようになっている(参考文献:9)。しかし、これまでIVUSで血管の大きさを詳細に評価した後にカバードステントを留置した場合の開存率の報告はない。また本ステントは、他のステントと比較してステント血栓症の頻度は高いことが報告されている。血栓性閉塞の発生は各個人の血小板凝集能と関連する可能性があるが、こちらに対しても既報はない。
そこで本研究では、実臨床において、FPA病変を有する症候性PAD患者に対し、Viabahn末梢血管用治療機器をIVUS併用下で留置した場合のEVTの12ヶ月の治療成績の実態を明らかにするとともに、その関連因子を探索する。
研究デザイン
多施設前向き観察研究
研究期間及び目標症例数
研究期間 | :2017年3月~2020年8月 |
症例登録期間 | :2017年3月~2018年12月 |
観察期間 | :2017年3月~2020年2月 |
目標症例数 | :500例 |
研究の実施体制
主任研究者
飯田 修
独立行政法人 労働者健康安全機構 関西労災病院
循環器内科 副部長
副主任研究者
曽我 芳光
一般財団法人 平成紫川会 小倉記念病院
循環器内科 部長
山岡 輝年
日本赤十字社 松山赤十字病院
血管外科 部長
実行委員
- 岩崎 祐介
- 大阪急性期・総合医療センター 心臓内科
- 川﨑 大三
- 森之宮病院 循環器内科
- 上月 周
- 大阪府済生会中津病院 循環器内科
- 椿本 恵則
- 京都第二赤十字病院 循環器内科
- 平野 敬典
- 済生会横浜市東部病院 循環器内科
- 藤原 昌彦
- 岸和田徳洲会病院 循環器科
- 市橋 成夫
- 奈良県立医科大学 放射線科
データマネージャー
- 高原 充佳
- 大阪大学大学院医学系研究科 糖尿病病態医療学寄附講座
研究顧問
- 真野 敏昭
- 関西労災病院 循環器内科
- 南都 伸介
- 西宮市立中央病院 循環器内科
- 坂田 泰史
- 大阪大学大学院医学系研究科 循環器内科
- 倉谷 徹
- 大阪大学低侵襲循環器学
研究参加施設および研究責任者(順不同)
- 01. 池岡 邦泰
- 八尾市立病院
- 02. 岩崎 祐介
- 大阪急性期・総合医療センター 心臓内科
- 03. 習田 龍
- 大阪労災病院 循環器内科
- 04. 上月 周
- 大阪府済生会中津病院 循環器内科
- 05. 川﨑 大三
- 森之宮病院 循環器内科
- 06. 田崎 淳一
- 京都大学医学部附属病院 循環器内科
- 07. 全 完
- 京都府立医科大学付属病院 循環器内科
- 08. 南都 清範
- 関西労災病院 循環器内科
- 09. 椿本 恵則
- 京都第二赤十字病院 循環器内科
- 10. 中村 浩彰
- 加古川中央市民病院 循環器内科
- 11. 曽我 芳光
- 小倉記念病院 循環器内科
- 12. 飛田 一樹
- 湘南鎌倉病院 循環器内科
- 13. 土井尻 達紀
- 大和成和病院 循環器内科
- 14. 樋上 裕起
- 大津赤十字病院 循環器科
- 15. 平野 敬典
- 済生会横浜市東部病院 循環器内科
- 16. 藤原 昌彦
- 岸和田徳洲会病院 循環器科
- 17. 三浦 崇
- 信州大学医学部 循環器内科学
- 18. 山岡 輝年
- 松山赤十字病院 血管外科
- 19. 関 秀一
- 近森病院 循環器内科
- 20. 原口 和樹
- 新古賀病院 循環器内科
- 21. 市橋 成夫
- 奈良県立医科大学 放射線科
- 22. 新家 俊郎
- 神戸大学大学院医学系研究科 循環器内科
- 23. 服部 努
- 相模原協同病院 心臓血管外科
- 24. 古屋 敦宏
- 旭川医科大学 血管外科
- 25. 末松 延裕
- 福岡県済生会福岡総合病院 循環器内科
参考文献
- 1) Norgren L, et al. Inter-society consensus for the management of peripheral arterial disease (TASC II). J Vasc Surg. 2007;45:S5A-S67A.
- 2) Kasapis C ,et al:Routine stent implantation vs percutaneous transluminal angioplasty in femoropopliteal artery disease:a meta-analysis of randomized controlled trials. Eur Heart J. 2009;30(1):44-55.
- 3) Schillinger M, et al. Balloon angioplasty versus implantation of nitinol stents in the superficial femoral artery. N Engl J Med. 2006;354:1879-1888.
- 4) Krankenberg H ,et al:Nitinol stent implantation versus percutaneous transluminal angioplasty in superficial femoral artery lesions up to 10cm in length:the femoral artery stenting trial (FAST). Circulation. 2007;116:285-292.
- 5) Bosiers M, et al. Nitinol stent implantation in long superficial femoral artery lesions: 12-month results of DURABILITY I study. J Endovasc Ther. 2009;16:261-269.
- 6) Laird JR, et al. Nitinol stent implantation versus balloon angioplasty for lesions in the superficial femoral artery and proximal popliteal artery twelve-month results from the RESILIENT randomized trial. Circ Cardiovasc Interv. 2010;3:267-276.
- 7) Lammer J, Zeller T, Schoder M, et al. Heparin-bonded covered stents versus bare-metal stents for complex femoropopliteal artery lesions: the randomized VIASTAR trial (Viabahn endoprosthesis with PROPATEN bioactive surface [VIA] versus bare nitinol stent in the treatment of long lesions in superficial femoral artery occlusive disease). J Am Coll Cardiol. 2013;62:1320-7.
- 8) Lammer J, Zeller T, Schoder M, et al. Sustained benefit at 2 years for covered stents versus bare-metal stents in long SFA lesions: the VIASTAR trial. Cardiovasc Intervent Radiol. 2015;38:25-32.
- 9) Okamoto S. Periodical difference of SFA intervention based on MK3 data. Japan Endovascular Conference 2018, Osaka.
発表論文
One-Year Outcomes of Heparin-Bonded Stent-Graft Therapy for Real-World Femoropopliteal Lesions and the Association of Patency With the Prothrombotic State Based on the Prospective, Observational, Multicenter Viabahn Stent-Graft Placement for Femoropopliteal Diseases Requiring Endovascular Therapy (VANQUISH) Study. J Endovasc Ther. 2021;28:123-131.