研究活動
大腿膝窩動脈病変を有する閉塞性動脈硬化症患者に対するパクリタキセル薬剤溶出型末梢ステントを用いた血管内治療に関する多施設・前向き研究 (CAPSICUM研究)
Contemporary outcomes After Paclitaxel-eluting peripheral Stent implantation for symptomatic lower limb IsChemia with sUperficial feMoral or proximal popliteal lesion
-Prospective multicenter registry-
目的と意義
本研究の目的は、大腿膝窩動脈(FPA: femoro-popliteal artery)病変を有する症候性閉塞性動脈硬化症(PAD: peripheral artery disease)患者に対し、パクリタキセル薬剤溶出型末梢ステントを用いた血管内治療(EVT: Endovascular Therapy)の実臨床における12ヶ月の治療成績の実態を明らかにし、その関連因子を探索することである。本研究を実施することにより、パクリタキセル薬剤溶出型末梢ステントを用いた血管内治療成績およびその成績に関連する因子の詳細が明らかとなり、本研究で得られた知見は、今後のPAD診療に大いに役立つものと考える。
背景
現在、FPA病変を有するPADに対する血行再建術としてナイチノールステントを併用したEVTはバルーン単独で行ったものと比較して遠隔期成績が良好であることが報告されている(参考文献:1-6)。しかしながら、慢性期に生じる再狭窄の問題(1年で20-30%前後)は未だ解決されておらず、標的病変に対する再血行再建術が必要となる症例も少なくない(参考文献:1-6)。この再狭窄及び、標的病変再血行再建術(TLR: Target-Lesion Revascularization)を低減することができれば、EVTを受ける症例に対して、大いに恩恵をもたらすことができる。近年、パクリタキセル薬剤溶出型末梢ステントが登場し、PADに対する血行再建戦略が大きく変わりつつある。海外での多施設単群試験であるMAJESTIC試験においては、1年の一次開存は96.4%、2年は83.5%と報告されており、また3年での再血行再建術回避率は85.3%と、良好な成績が報告されている(文献7)。しかしながら、これらの研究は、日常診療で遭遇することの多い複雑病変を対象とした研究ではないため、実臨床においても同様の治療成績が得られているのか明らかではない。そこで本研究では、実臨床において、FPA病変を有する症候性PAD患者に対し、パクリタキセル薬剤溶出型末梢ステントを留置した場合のEVTの治療成績の実態を明らかにするとともに、その関連因子を探索する。
研究デザイン
多施設前向き観察研究
研究期間及び目標症例数
研究期間 | :研究機関の長の承認後~2025年12月 |
症例登録期間 | :研究機関の長の承認後~2020年2月 |
目標症例数 | :1,500例 |
研究の実施体制
主任研究者
飯田 修
独立行政法人 労働者健康安全機構 関西労災病院
循環器内科 副部長
副主任研究者
曽我 芳光
一般財団法人 平成紫川会 小倉記念病院
循環器内科 部長
山岡 輝年
日本赤十字社 松山赤十字病院
血管外科 部長
実行委員
- 川﨑 大三
- 森之宮病院 循環器内科
- 上月 周
- 大阪府済生会中津病院 循環器内科
- 藤原 昌彦
- 岸和田徳洲会病院 循環器科
- 市橋 成夫
- 奈良県立医科大学 放射線科・IVRセンター
データマネージャー
- 白記 達也
- 大阪大学大学院医学系研究科 循環器内科学
統計解析責任者
- 高原 充佳
- 大阪大学大学院医学系研究科 糖尿病病態医療学寄附講座
研究顧問
- 真野 敏昭
- 関西労災病院 循環器内科
- 南都 伸介
- 西宮市立中央病院 循環器内科
- 坂田 泰史
- 大阪大学大学院医学系研究科 循環器内科
研究参加施設および研究責任者(順不同)
- 01. 河合 努
- 大阪急性期・総合医療センター 心臓内科
- 02. 上月 周
- 大阪府済生会中津病院 循環器内科
- 03. 川﨑 大三
- 森之宮病院 循環器内科
- 04. 田崎 淳一
- 京都大学医学部附属病院 循環器内科
- 05. 辻村 卓也
- 関西労災病院 循環器内科
- 06. 椿本 恵則
- 京都第二赤十字病院 循環器内科
- 07. 中村 浩彰
- 加古川中央市民病院 循環器内科
- 08. 曽我 芳光
- 小倉記念病院 循環器内科
- 09. 飛田 一樹
- 湘南鎌倉病院 循環器内科
- 10. 土井尻 達紀
- 大和成和病院 循環器内科
- 11. 樋上 裕起
- 大津赤十字病院 循環器科
- 12. 平野 敬典
- 済生会横浜市東部病院 循環器内科
- 13. 藤原 昌彦
- 岸和田徳洲会病院 循環器科
- 14. 加藤 太門
- 信州大学医学部 循環器内科学
- 15. 山岡 輝年
- 松山赤十字病院 血管外科
- 16. 関 秀一
- 近森病院 循環器内科
- 17. 市橋 成夫
- 奈良県立医科大学 放射線科・IVRセンター
- 18. 末松 延裕
- 福岡県済生会福岡総合病院 循環器内科
- 19. 全 完
- 京都府立医科大学付属病院 循環器内科
- 20. 山口 真一郎
- 近江八幡市立総合医療センター 循環器内科
- 21. 土谷 武嗣
- 金沢医科大学病院 循環器内科
- 22. 篠崎 法彦
- 東海大学医学部付属病院 循環器内科
- 23. 宇都宮 誠
- 東邦大学医療センター大橋病院 循環器内科
- 24. 高橋 大
- 山形大学医学部附属病院 先進心血管治療学講座
- 25. 宮部 彰
- 河北総合病院 循環器科
- 26. 緒方 健二
- 宮崎市郡医師会病院 循環器内科
- 27. 仲間 達也
- 東京ベイ・浦安市川医療センター 循環器内科
- 28. 加藤 伸郎
- 王子総合病院 循環器科
- 29. 佐々木 伸也
- 坂総合病院 循環器科
- 30. 鈴木 健之
- 東京都済生会中央病院 循環器科
- 31. 山本 義人
- いわき市立総合磐城共立病院 循環器科
- 32. 檀浦 裕
- 市立札幌病院 循環器センター 循環器内科
- 33. 杉原 充
- 福岡大学病院 循環器内科
- 34. 堀江 和紀
- 仙台厚生病院 循環器内科
- 35. 石崎 勇太
- 久留米大学病院 循環器病センター
- 36. 三浦 崇
- 長野市民病院 循環器内科
- 37. 仲里 淳
- 沖縄県立中部病院 循環器内科
- 38. 山内 靖隆
- 総合高津中央病院 心臓血管センター
- 39. 佐藤 圭
- 三重大学医学部附属病院 血管ハートセンター
- 40. 川本 健治
- 岩国医療センター 循環器科
- 41. 戸田 洋伸
- 岡山大学病院 循環器内科
- 42. 丹 通直
- 時計台記念病院 循環器内科
- 43. 原口 拓也
- 札幌心臓血管クリニック 循環器内科
- 44. 大峰 高広
- 広島赤十字・原爆病院 第二外科
- 45. 久良木 亮一
- 九州医療センター 血管外科
- 46. 柴田 豪
- 市立函館病院 心臓血管外科
- 47. 吉岡 亮
- 心臓病センター榊原病院 循環器内科
- 48. 宮下 裕介
- 長野赤十字病院 循環器内科
- 49. 中尾 優
- 東京女子医科大学病院 循環器内科
- 50. 岩田 曜
- 船橋市立医療センター 循環器内科
- 51. 早川 直樹
- 旭中央病院 循環器内科
- 52. 中野 雅嗣
- 総合東京病院 循環器内科
- 53. 安藤 弘
- 春日部中央総合病院 循環器科
- 54. 新谷 嘉章
- 上尾中央総合病院 循環器内科
- 55. 太田 洋
- 板橋中央総合病院 循環器内科
- 56. 小島 帯
- 岐阜県総合医療センター 循環器内科
- 57. 市橋 敬
- 一宮西病院 循環器内科
- 58. 越田 亮司
- 豊橋ハートセンター 循環器内科
- 59. 加藤 拓
- 洛和会音羽病院 心臓内科
- 60. 辛島 詠士
- 下関市立市民病院 循環器内科
- 61. 赤堀 宏州
- 兵庫医科大学病院 循環器内科・冠疾患科
- 62. 住吉 晃典
- 桜橋渡辺病院 循環器内科
- 63. 島田 健晋
- 倉敷中央病院 循環器内科
- 64. 相原 英明
- 筑波メディカルセンター病院 循環器内科
- 65. 徳田 尊洋
- 名古屋ハートセンター 循環器内科
- 66. 山浦 誠
- 木沢記念病院 循環器内科
参考文献
- 1) Norgren L, et al. Inter-society consensus for the management of peripheral arterial disease (TASC II). J Vasc Surg. 2007;45:S5A-S67A.
- 2) Kasapis C ,et al:Routine stent implantation vs percutaneous transluminal angioplasty in femoropopliteal artery disease:a meta-analysis of randomized controlled trials. Eur Heart J. 2009;30(1):44-55.
- 3) Schillinger M, et al. Balloon angioplasty versus implantation of nitinol stents in the superficial femoral artery. N Engl J Med. 2006;354:1879-1888.
- 4) Krankenberg H ,et al:Nitinol stent implantation versus percutaneous transluminal angioplasty in superficial femoral artery lesions up to 10cm in length:the femoral artery stenting trial (FAST). Circulation. 2007;116:285-292.
- 5) Bosiers M, et al. Nitinol stent implantation in long superficial femoral artery lesions: 12-month results of DURABILITY I study. J Endovasc Ther. 2009;16:261-269.
- 6) Laird JR, et al. Nitinol stent implantation versus balloon angioplasty for lesions in the superficial femoral artery and proximal popliteal artery twelve-month results from the RESILIENT randomized trial. Circ Cardiovasc Interv. 2010;3:267-276.
- 7) Müller-Hülsbeck S, et al. Long-Term Results from the MAJESTIC Trial of the Eluvia Paclitaxel-Eluting Stent for Femoropopliteal Treatment: 3-Year Follow-up. Cardiovasc Intervent Radiol. 2017 Dec;40(12):1832-1838.
発表論文
1-Year Outcomes of Fluoropolymer-Based Drug-Eluting Stent in Femoropopliteal Practice
Predictors of Restenosis and Aneurysmal Degeneration
JACC:CARDIOVASCULAR INTERVENTINOS VOL.15, NO.6, 2022